中里税務会計事務所






取引先から信頼される経理になろう!
 支払ミスや振込間違いの防止策・対処策を教えます
中小企業の経理担当者は、支払専門の部署がある企業とは異なり、いくつもの業務を担当するなかで支払業務を行っています。そうした状況を踏まえて、支払ミスの防止策をまとめました。
支払ミスは重大な結果を引き起こす
日常の支払業務をきちんと行うためには、
経理担当者が支払期日までに正確に間違いなく処理すること
上司等によるダブルチェックを受けること

しかし現実には、経理担当者は日々の業務に追われ、期日管理、事務処理が疎かになりがちです。また、上司等によるチェック体制についても、特に経理課長が総務・人事を兼務していたり、社長が全てを取り仕切っているようなケースでは、十分に管理することはできません。したがって、担当者に注意を促したりペナルティを課す、上司等のチェック機能の不足を追及するといった対応では、支払ミスの撲滅は困難です。短期的な改善は図れたとしても、常に再発の可能性を残すことになります。当然ながら、支払ミスは絶対にあってはならないことです。自社の信用を低下させるだけでなく、取引先にも多大な迷惑をかけます。特に取引先が、その支払(入金)を当てにしている場合には、自社の支払ミスが取引先の支払不能や不渡りに直結し、存亡の危機に繁がるケースもあります。
そこで今回は、リスク管理の一環として会社の“システム”としての支払業務の見直しを考えていくことにします

支払ミスの実態はこうなっている
日常よくある支払ミスは次のようなものです。

伝票の金額欄を見間違え、過払い・過少払いをしてしまった。

支払日に振込予定だったが当日急がしく、手続きを忘れた。
指示に従って支払ったが、金額が変更されていた。
今月の支払いはすべて終わったと思っていたら、もう1件請求書があった。
今月支払うべき請求書が来月分に混入していた。
手形で支払ったら、金融機関ごとの資金管理をしていなかったため、決済日に銀行から残高不足の連絡を受けた(他行には資金があったが、手形が決済される銀行にはなかった)。
先日付小切手を切ったことを忘れていた。
銀行から該当口座がないとの連絡があり、確認したところ、名義の違い(河野=コウノとすべきところを「カワノ」としていたなど)とわかったが、銀行の処理時間に間に合わず、その日に振込みができなかった。
支払ミスは、その発生原因により、次の2つに大別できます。
担当者の不注意で発生するもの
支払システムが構築できていないために発生するもの
に属するミスは、経理担当者が注意をすれば大半は防げるものです。日頃から次のような事を心がけましょう
記憶で処理しない。
仕事をため込まない。
数字は正しく、文字は正確に書く。(両方とも丁寧に)
一方、による支払ミスを防ぐには、担当者レベルだけでは限界があります。事項で対策を考えていくことにしましょう。
システムとして支払業務を確立する
個々の能力・資質等にかかわらず、いつ誰が担当してもきちんと日常の業務運営ができるよう、会社の“システム”として支払業務を改善・構築します。
改善にあたってのポイントをまとめると、次の通りです。なお、いずれにおいても、担当者と上司等によるダブルチェックが基本であることは共通です。

絶対確実!ポイント10


 支払日は1ヶ月に1日(1回)にまとめる

 月次支払計画表を作成する

 請求書、支払依頼書を受け取る

 支払伝票(振替伝票を含む)を作成する

 支払明細一覧表を作成する

 銀行振込は事前い支払準備を完了させる

 約束手形は期日管理を徹底する

 日々資金繰り表を作成する

 支払業務のマニュアルを作成する

 定期的なチェックを行う

ポイント1・・・・・支払日は1ヶ月に1日(1回)にまとめる

請求の都度、取引先への支払いを行うのは大変な手間であり、ミスも発生しやすいもの。
例えば、毎月15日締め、20日支払いなど、特定の日を締切日(締日)に決め、その締切日の数日後(支払の準備が完了する日)を支払日とします。つまり、できるだけ支払いが1日(1回)で済むようにするのです。
その際、支払日は入金日の後がベターであることは当然です。

ポイント2・・・・・月次支払計画表を作成する

給料、賃借料、借入金返済・金利支払いなど、毎月支払いが決まっているものは、前もって月次支払計画表に記入します。
これ以外が、主として取引先への支払いということになります。
月次支払計画表(図-1)に記入します。これ以外が、主として取引先への支払いということになります。
月次支払計画表を作成することによって、経理担当者の1ヶ月の事務のスケジュールが明らかになり、計画的な事務処理が可能になります。

ポイント3・・・・・取引先からは請求書を、購買部門からは支払依頼書を受け取る
不正な請求書(架空請求など)の紛れ込みを防ぐため、取引先からの請求書は、必ず支払依頼書とともに経理部宛てに提出するというルールを決めます。
購買部門との受け渡しに際しては、受け渡し管理簿に記入して紛失等を防ぎます。支払依頼書には、担当者との責任者の印を押印してもらい、経理部はその支払依頼書が正当なものであることを確認します。
金額の大きい支払いは、支払依頼書に加えて支払金額が社内稟議承認条件の範囲内かも確認しておきます。
また、出先や地方の営業所の支払業務は、すべて本社経理部門に集中させ、一元管理するのが望ましいでしょう。バラバラに支払いが行われると、ミスの温床になりやすいからです。
ポイント4・・・・・支払伝票(振替伝票を含む)を作成する
請求書と支払依頼書を受け取ったら、経理部では一連の番号を打ち、支払伝票を作成します。平成17年11月分の支払伝票と請求書なら、『17―11―01』とすれば、管理がし易くなります。
なお、伝票類のファイリングも大事な仕事です。支払伝票・請求書・支払依頼書の大きさ、形は様々ですから、それぞれ別のファイル(綴り)に、番号順に綴じ込みます。企業規模により取引先ごとに管理したり、支払伝票に請求書を貼って綴るなど、自社に適した管理方法を考えてください。
ポイント5・・・・・支払明細一覧表を作成する
支払伝票とともに支払明細一覧表を作成します。支払明細一覧表の作成では、表計算ソフトを利用すると便利です。
この伝表と一覧表は、請求書が届くごとに、あるいは締切日後の特定の一日にまとめて、自社のやりやすい方法で作成してかまいません。
この段階では記載日順となっていますから、
ポイント6・・・・・銀行振込は事前い支払準備を完了させる
銀行振込による支払いでは、支払日当日の事務処理を避けることがミスを防ぐポイントです。決められた支払日より前支払準備を終えておきます。銀行の法人用インターネット・バンキングを上手に利用しましょう。
ポイント7・・・・・約束手形は期日管理を徹底する
約束手形振出しによる支払いも、基本的には銀行振込と同様です。ただ、通常は数ヶ月後を支払い期日として振り出しますから、手形の決済日の管理と資金繰りが大切になります。
期日管理を厳格に行うため、手形の振出管理表(振出日順)や、手形決済期日管理表、支払手形取引先別管理表を作成します。手形と同じく、支払日が先になる先日付小切手にも注意しましょう。
ポイント8・・・・・日々資金繰り表を作成する
資金の流れを把握するためには、日々資金繰り表が欠かせません。毎日、銀行の預金残高と資金繰り表の残高をチェックして、差異を修正します。
資金繰り表は『前日預金+収入計−支出計=翌日預金』となります。収入計は、手形回収を除き、支払手形期日決済を含みます。
銀行残高とのチェックを簡単にするため、入出金を行っているメイン通帳はできれば一冊にするとよいでしょう。
ポイント9・・・・・支払業務のマニュアルを作成する
ポイント1〜8で説明した事を『事務手続きマニュアル』としてまとめ、関係書類とともに所定の場所に保管しておきます。マニュアルは、誰でもいつでも閲覧できるようにしておき、勉強会等の場を設けて経理部員に周知徹底します。そうすれば、経理担当者が急な病気で不在の時や、担当者の異動があった場合にも、マニュアルで対応できます。
経理部門だけでなく、関連部署の関係の協力も取り付けておきましょう。
ポイント10・・・・定期的なチェックを行う
月次支払計画表や支払期日ごとの支払明細一覧表に従って、少なくとも週1回と、月末ごとの業務の進捗状況、支払ミス、支払モレがないかを見直します。
支払ミスが発生したらどう対処すべきか

銀行振込で支払いミスが発生した場合の対処法は、原則として次のようになります
銀行への対処
振込予約で支払いミスが判明した場合は銀行に訂正を依頼します。インターネットバンキングでは、画面上で訂正処理をします。
振込予約でない場合は、原則として手続きが終了した時点で即時に振込みが完了しますから、より迅速な対応が求められます。
訂正処理が間に合わない場合は、銀行で『組み戻し』という資金を戻す手続きが必要ですが、手続き終了まで資金が戻ってこないことに注意しましょう。
支払先への対処
訂正や組み戻しの処理が間に合わず、支払日に入金できないことが判明した時点で、すぐに取引先へ連絡します。購買サイドから連絡を入れた方がよいケースもあるので、購買担当者ともすぐに連絡を取ります。
関連部署への対処
支払いミスが原因で取引関係が悪化することがないよう、関連部署と以後の対応を検討します。
再発防止のための対処
二度と同じミスを繰り返さないため、勉強会などの場で原因を究明し、その改善を立てます。再発防止のためのチェックリストを作成するのもよい方法です。