中里税務会計事務所










「相続税法」の中には、相続税贈与税の二税目が規定されています。まず、この二つの税目の違いから説明しましょう。


相続税は、所得税を補完するために設けられました。死亡した方の残した財産は、その死亡した方の個人の所得からなっている部分に関しては、生前、所得税が課税されております。しかし、その財産の中には所得税が課税されていないものが含まれております。そこで、その方が死亡した時点におけるその方の財産について、所得税を補完する形で相続税が課税されるのです。


贈与税は、上記の相続税をさらに補完するために設けられました。相続税は亡くなった方の亡くなった時点での財産に課税する事から、亡くなる以前に他人に無償で移転してしまえば、相続税を課税回避できてしまう事になります。そのため、相続税を補完するために贈与税があるのです。


相続税と贈与税に共通する事項としては、「財産を取得した者に対して課税する」という事です。ですから、相続・遺贈・贈与により、無償で財産の移転を受けた方は注意が必要です。




では次に、財産の無償移転の形態である、相続遺贈贈与についてご説明致します。


まず、相続ですが、これは人の死亡によってその亡くなった方(被相続人)の財産に属していた一切の権利義務を、その亡くなった方と一定の血族関係にある方や配偶者(相続人)が包括的に承継する事をいいます。


遺贈とは、遺言による財産の無償の譲渡をいいます。これは、死亡した人の意志に基づく財産の無償移転形態であり、包括遺贈と特定遺贈があります。


贈与とは、当事者間の意志により、一方(贈与者)の財産を無償でもう一方(受贈者)に移転させる事をいいます。これは贈与者が無償移転する意志を示し、受贈者が受諾してはじめて成立します。


これら3つの移転形態はすべて民法に規定されており、相続税法はその民法を前提に作られた税法であります。




では次に、承認と放棄についてご説明致します。


承認とは、相続・遺贈により財産を取得するという意思表示であり、放棄とは、相続・遺贈により財産を取得しないという意思表示をいいます。


ですから、相続・遺贈により財産を取得する権利がある方でも、その権利を放棄し、受け取らない事もできるという事です。(ただし、民法において「相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に承認又は放棄をしなければならない」と、期限が定められています。)


ちなみに、贈与者、受贈者の意志により成立する贈与には承認・放棄という制度はありません。


このように、相続税法は民法と密接なかかわりをもっており、また、移転形態や、財産の種類、相続人の続柄・人数等により様々なケースが存在し、複雑な税法であると言えます。




 被相続人の死亡により財産を相続される方は、次の場合、相続税の申告が必要になります。
 (納税額が0(ゼロ)でも申告義務がある場合もありますのでご注意下さい。)
(死亡の日の翌日から10ヶ月以内が申告期限)
基礎控除額とは…5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)
例)法定相続人3人のケース
,000万円+(1,000万円×3)=8,000万円

(期限後申告でも可)
小規模宅地等の評価減とは
被相続人の事業の用、または居住の用に供されていた宅地等で、一定限度の面積までは、通常の方法によって計算した価額から、次に掲げる減額割合をその宅地の価額に乗じて計算した金額を控除した金額を相続税の課税価格に算入するというものです。
(特定事業用宅地・特定居住用宅地)減額割合80%
上記 以外の小規模宅地等(駐車場等)減額割合50%

(期限内10ヶ月以内の申告が必要)
配偶者の税額軽減とは
被相続人の配偶者が相続により財産を取得した場合には、次に掲げる金額を配偶者の税額から控除してあげようというものです。
相続税の総額×{(純財産×配偶者の法定相続分)*1億6千万以下の時は
1億6千万
÷純財産}=配偶者の税額軽減額

注)配偶者の取得財産が1億6千万円までは相続税は0(ゼロ)となります。


不動産の登記と相続税
私は、以前父の死亡により土地を相続しましたが、この土地の登記上の名義は、まだ、父名義のままとなっています。 この度、この土地を知人に売ることとなり私名義に相続登記することとなりましたが、税務上何か問題があるでしょうか?
相続登記と相続税に直接的な関係はありません
一般的には、相続によって取得した土地の相続登記の日と相続税の申告書の提出期限等とは直接関係はありません。また、その土地について相続登記されることにより新たに相続税の課税関係を生ずることはありません。
死因贈与と相続税
現在私が居住している家屋及び敷地を父が贈与してくれることとなりました。他の兄弟に対する遠慮もあり贈与の効力は父が死亡した時に生ずることにしています。
この場合、私がこの家屋と敷地を取得したのはいつになりますか。また、相続税、贈与税のいずれが課税されるのでしょうか?
死因贈与と遺贈の経済的実質は同じです
贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与を死因贈与と言います。
死因贈与は贈与者と受贈者の契約であり、遺贈は贈与者の単独行為であるという法律的性格の違いはありますが、民法上死因贈与は遺贈に関する規定に従う旨の定めがあり、経済的実質は両者とも全く同じですから、相続税法上でも死因贈与は遺贈と同様に見ることにし、そのどちらによる財産の取得も相続税の課税対象とされています。
夫婦が共同で住宅を購入した場合
私たち夫婦は、この度分譲マンションを購入しました。このマンションに係る借入金3,000万円については夫名義で金融機関から借り入れたものですが、その返済は夫婦共同で行うつもりです。このやりかたで税務上何か問題があるでしょうか?
出資金の額、及び借入金の返済額の割合で共有登記されれば贈与税の問題になりません
マンション購入資金の負担の割合に応じた共有登記が行われていませんと、贈与の問題になるケースがあります。今回のように、借入金の返済が夫婦の収入によって共同でされている場合は、夫婦それぞれの所得の割合によって借入金を負担しているものとして取り扱われます。
したがってその負担の割合に応じた登記がされている限り贈与税の問題は生じません
使用貸借により土地の借受けがあった場合の借地権について
父が所有している土地の上に、私が店舗を建てる計画をしています。
土地の借受けについては無償です。この場合に借地権相当額の贈与があったものとされますか?
使用貸借の場合、借地権の価額はゼロとして取り扱われます
個人が所有する土地を個人が無償で借受けた場合や、固定資産税程度の金額を支払うことにして土地を借受けた場合の土地の借地権価額はゼロとして取り扱うこととされています。
したがって、ご質問のケースは借地権相当額の贈与を受けたものとして、贈与税を課税されることはありません。ただし、その土地について将来その所有者であるお父さんが死亡した場合や、その土地を贈与した場合における評価額は、借地権の設定されていない更地として評価することになります
生命保険金の受取人について
夫は、独身時代に夫の父を受取人とする生命保険の契約に加入しておりましたが、先月私と幼い子供を残して死亡いたしました。義父はこの度の夫の死亡に伴う保険金を妻である私が受け取っても良いと申しておりますが、保険契約上の受取人は私ではありませんので私がこれを受け取ると義父からの贈与になりますか?
保険金を受け取るについて相当の理由があれば贈与にはなりません
死亡保険金を受け取った場合で、被相続人が保険料を負担していた場合には、その保険金受取人(保険契約上の保険金受取人)がその保険金を相続又は遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税の対象とされます。

ただし、保険契約上の保険金受取人以外の者が現実に保険金を取得している場合において、保険金受取人の名義変更手続きがなされていなかったことにつき、やむを得ない事情があると認められる場合など、現実に保険金を取得した者がその保険金を取得することについて相当の理由があると認められるときは、その者を保険金受取人とすることとされています。

お尋ねの場合、保険証券に記載されている保険金受取人は義父ですが、これは独身時代の契約であり、結婚を契機に保険金受取人をあなたに変更すべきところ、それをしないままご主人が死亡したものと考えることもできます。したがって、あなたが受け取った保険金は、あなたがご主人から相続により取得したものと取り扱われるでしょう。
相続時精算課税制度について
息子が家を購入することになりました。自己資金で足りない部分はローンを組まなければなりませんが親としてはできるだけ負担を軽くしてやりたいと思いますので金銭的な援助を少しすることにしました。税法が改正され、住宅取得資金の贈与については有利な取り扱いとなったように聞いていますが概要を教えて下さい。
平成15年より贈与税の相続時精算課税制度が創設されました。
65才以上の親から20才以上の子への生前贈与の際に納めた贈与税は、親の死亡時に納める相続税額から差し引くことができるという、贈与税と相続税の課税を一体化して精算課税する全く新しい仕組みです
趣  旨
高齢世代から若年層への資産移転を促進し、住宅投資などを活性化させるため、抜本的に相続税・贈与税の制度が見直されました
相続時精算課税制度の概要
65才以上の親から20才以上の子への生前贈与時
本制度の適用対象となる贈与者及び受贈者はそれぞれ贈与をした年の1月1日において65才以上の親、同日において20才以上の子である推定相続人(代襲相続人となる孫も含みます)とされます。人数に制限はなく、兄弟姉妹がそれぞれ別々に適用を受けるかどうかを選択することができます。通常の贈与税の課税制度では、受贈者ごとにその年に受けたすべての人からの贈与財産を合計して贈与税を計算しなければなりませんが、この新制度の適用を受けた場合には、ここから切り離して父母ごとに計算し、その親に相続が発生するまで計算して行きます。
2,500万円(住宅取得資金の場合プラス1,000万)まで贈与税が無税
贈与の回数や財産の種類、一回の贈与の金額、贈与の期間などに制限はありませんので2,500万円に達するまで何度でも無税で贈与できます。
2,500万円 を超えた部分については一律20%の税率で課税されますので後になってから通常の贈与制度(基礎控除 110万)に戻ることはできません。一度新制度を適用したら、その親との関係に置いては相続発生時まで新制度が継続適用されます。また、父と母の両方の贈与に適用することができますので2,500万円×2=5,000万円 までは、非課税で贈与を受けることができます。
また、これとは別に例えば祖父から通常贈与で110万円の贈与を無税で受けることもできます。
住宅取得資金については3,500万円まで贈与税が無税
平成17年12月31日までは自己の居住の用に供する一定の家屋を取得(これらの家屋とともにするその敷地又は土地の権利の取得を含みます)する資金又は自己の居住の用に供する家屋の一定の増改築のための資金の贈与を受ける場合に限り、65才未満の親からの贈与についても適用することとされるほか、これらの資金の贈与については2,500万円 の非課税枠(特別控除)に1,000万円 (平成17年12月31日までの期間限定)がさらに上乗せされ、非課税枠(特別控除)は累計で3,500万円となります。つまり65才未満の親からは住宅取得資金に限定されますが3,500万円まで、65才以上の親からは住宅だけに使途を問わない2,500万円及びに1,000万円 の住宅取得資金の贈与の非課税枠が設けられました。
相続税額の計算(贈与税と相続税の精算)
新制度の選択をした子は、新制度に係る親からの相続時に、それまでの贈与財産と相続財産とを合算(合算される贈与財産の価額は贈与時の時価)して現行と同様の課税方式(法定相続分による遺産取得課税方)により計算した相続税額から既に支払った新制度に係る「贈与税」相当額を控除します。
(もっとも、控除すべき贈与税は算出されていないケースもあります )その際、相続税額から控除しきれない場合には、その控除しきれない新制度に係る「贈与税」相当額について還付を受けることができます。
節税になるかどうかはケースバイケース
新制度の贈与を受けた場合には相続発生時点に置いて親から適用後に受けたすべての贈与財産を加算して相続税が課せられます。つまり新制度は、相続財産の生前における財産移転による相続対策にはなりません。
この意味に置いてはむしろ従来の制度による長期間における110万 の基礎控除と贈与税の低率部分を利用した通常贈与を適用したほうが贈与財産と相続財産を切り離すことができますので有利なことが多いでしょう。但し、将来値上がりする見込みの高い財産や収益物件等を事前に移転するため新制度は有効に活用できるでしょう。
結   論
節税になるかどうか別にしてこの制度の創出によって親から子供への財産の早期移転は可能となったといえるでしょう。